私共「和の國」は、本年、創業百十周年という大きな節目を迎えました。
大正五年、祖父母の創業より、この熊本の地で歩みを続けてこられたのも、ひとえに皆様お一人おひとりの温かな支えがあったからこそです。本当にありがとうございます。
今、静かに振り返って思うことがあります。もしも三十四年前、「きもの宣言」をしていなかったら、今の私はもちろん、「和の國」も存在していなかったかもしれません。
着物姿を「時代劇の人」と言われる世の中。毎日を着物で過ごし、その肌触りや温もり、日本人としての誇りを身をもって感じていなければ――あまりの逆風に心が折れ、別の道へと舵を切っていたのではないか。そんな思いがしてならないのです。
けれど、「一生、着物と生きる」と退路を断ち、毎日を着物と共に過ごしました。
「温故知新」――古きを訪ね、新しきを知る。
その言葉通り, 先人たちが守ってきた伝統に身を投じたことで、新たな光が見えてきたのです。
「形から入ると心が整ってくる」とあるように、着心地の良さを追求した先に待っていたのは、職人の魂が宿る「手仕事の着物」でした。
言葉少なに、ただひたすら仕事に丹精込める職人さんの着物に袖を通すたび、その価値の尊さを改めて教えられる思いです。
本物の着物は、背筋を優しく伸ばし、何かに守られているような安心感と豊かさを与えてくれます。
そして、その着物をまとったあなたの佇まいは、周囲の目を惹きつけ、特別な日をさらに忘れられない思い出にしてくれるはずです。
毎日忙しく過ごされる中で、ふと人の手の温もりや季節の移ろいを感じたいと思う瞬間はありませんか?
着物は、私に大切なことを教えてくれました。
それは、日々の暮らしの中に「美」があるということ。
・手仕事の温もり
・てまひまをかける心
・季節を感じる感性
・和を尊ぶ気持ち
・人をねぎらうやさしさ
日本人が大切にしてきた「和の心」という美徳が、一枚の着物の中に静かに息づいています。
110年の歩みを振り返ったとき、私の中には「三つの眼」が育っていることに気づきました。
一、現場に生きる「職人の眼」
二、業界を見つめてきた「商人の眼」
三、そして三十四年間着続けてきた「着る人の眼」
この三つの眼が、答えを導いてくれました。
「手仕事のきものを守り、和の心を育むこと」――それこそが、私たちに与えられた使命だということです。
AIが急速に普及する現代、人の温もりが届きにくい時代です。
だからこそ、手仕事の着物をまとうことで「日本の心を再発見」し、お客様の日常がより心豊かで、誇り高いものになるようお手伝いさせていただくこと。
それが私たちの使命です。
創業110周年という大きな節目を新たな一歩とし、皆様への感謝を胸に、これからも暖簾に恥ぬよう、一歩一歩、誠実に歩んでまいります。
着物を通じて、皆様と心を通わせながら、共に豊かな時間を重ねていきたいと願っています。
少しでも「手仕事の着物」の温もりにご興味を持たれましたら、ぜひ一度、お話してみませんか。あなたと心を通わせる時間を、楽しみに待っています。
2026年5月吉日