皆さん、こんにちは! 着物923(くにさん)こと、茨木國夫です。
9月に入り、朝夕の風にどこか秋の兆しを感じる頃となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか😀
二十四節気(にじゅうしせっき)では、先日7日に「白露(はくろ)」を迎えました。大気が冷えて草木に朝露が宿り始める頃とされ、少しずつ季節の針が進んでいるのを感じます。
そして、9月9日は「重陽(ちょうよう)の節句」でした。 奇数の中で一番大きい「9」というおめでたい数字が重なることからこう呼ばれ、別名「菊の節句」ともいわれます。菊の花に浮かべたお酒をいただいたり、菊の香りをまとわせた綿(菊の被綿・きせわた)で体を拭って無病息災や不老長寿を願うという、昔ながらのとても風流な和の行事です。
おめでたい酒の宴といえば、能の演目『猩々(しょうじょう)』が思い浮かびます。無心に酒を愛で、尽きることのない酒を恵んで舞い戯れる吉兆の妖精・猩々。僕もこの佳き日に合わせ、皆さまの無病息災と長寿を祈りながら、心を込めて猩々を謡いました。
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昨日「9月10日」は僕の中で秘かに「九重(くじゅう)の日」でした(笑)。 大分県の美しい九重連山に思いを馳せながら、「また、朝焼けに生える九重に登りたいなぁ〜♪」と。でも、山登りは1月末まで封印。「高砂」の舞囃子という高い山に挑み続けます☺️
そして本日・9月11日は、立春から数えて「二百二十日(にひゃくはつか)」にあたります。 昔から「台風が来やすい厄日」として農家の方々が警戒してきた季節の節目ですが、幸いにも今年の熊本は静かな空が広がっています。
こうして暦をめくるたびに、日本の四季は確実に、そして美しく移り変わっていきます。。。
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そんな季節の移ろいを感じていると、ふと、今回ご紹介したい一人の染織家のことが頭に浮かびました。
自然の中から色をいただき、糸を染め、一本一本の糸を重ねながら、一枚の布を生み出していく。
そう、9月23日(くにさんの日)から「和の國」で開催する特別な展示会に出展いただく、僕が以前からリスペクトしている染織作家・根津美和子さんです。
お馴染みの皆さまには、ご案内が届いていることかと存じます。
今回、四国・高松を訪ねて、染織家・根津美和子さんの工房にお邪魔しました。
工房でお話を伺っていると、なんとも印象に残る言葉が飛び出してきました。
「織っていて楽しいのは、最初の1尺くらいなんですよ。」
……えっ?
1尺といえば、約38センチ。
着物一反を織ることを考えれば、まだまだ始まったばかりです。
「じゃあ、その後は?」
そう尋ねると、根津さんは笑いながら、
「もう、忍耐です(笑)」と。
思わず、こちらまで笑ってしまいました。
でも、その笑顔の奥には、織物を知る人ならではの深い言葉がありました。
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根津さんは、もともと和裁をされていました。
着物を縫うことを知っている。
だからこそ、布がどのように身体に沿い、どんな寸法で仕立てられ、実際に着たときにどうなるのか――。
「布を作る人」でありながら、「着物を着る人」の感覚も持っている。
これは、根津さんの作品を語るうえで、とても大きな魅力だと思います。
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そして、工房でのお話を聞いていると、もう一つ印象に残ることがありました。
とにかく、よく数える。
糸の本数を数え、間隔を計算し、正座をして、ひたすら一つひとつ確認していく。
それは、傍から見ているだけでも「気が遠くなる……」と思うような作業です。
ところが根津さんは、「私は素人だから。」「人に教えるようなことなんてないですよ。」と、いたって謙虚。
いやいや……。
その「素人」という言葉と、目の前で繰り広げられている仕事との差が、なんとも面白いのです。
素人と言いながら、やられていることは、とんでもなく細かく美しい。
そして、妥協しない。
そこには、静かな芯の強さがあります。
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では、なぜそこまでして織るのでしょう。
答えは、とてもシンプルでした。
「好きだから。」
好きだから、やめられない。
最初の1尺は楽しい。その先は忍耐・・・。
それでも、また機(はた)に向かう。
これは、ものづくりの世界では、とても本質的なことなのかもしれません。
「楽しいから続ける」のではなく、
「好きだから、忍耐も含めて続けられる」
根津さんのお話を聞いていて、そんなことを感じました。
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そして、もう一つ。
根津さんの布には、どこか優しさがあります。
志村ふくみさんのような、着ることそのものに強い精神性を感じさせる布とは、少し違います。
根津さんは、「私の作品は、ただ楽しんで、着やすく着てもらえればいい。」
「そんな気持ちで布を作っているのです。」と。
もちろん、そこにある技術は決して「ただもの」ではありません。
けれど、着る人に「頑張ってください。」と迫るのではなく、「どうぞ楽しんでください。」
と、そっと手渡してくれるような布。
それが、根津美和子さんの魅力なのだと思います。
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今回、工房を訪ねて感じたのは、
「すごい技術を持った作家さん」だけではない、根津美和子さんという人そのものの魅力です。
布を愛し、着る人を思い、そして今日も黙々と機に向かう。
その姿を知ってから作品を見ると、きっと布の見え方も少し変わるはずです。
さて。
次回は、いよいよ根津さんの「布の秘密」に迫ります。
なぜ、根津さんは「縦(たて)」に惹かれるのか?
そして、桃の枝やヤシャ、アイリスなど、植物から生まれる色は、どうしてあんなにも優しく、透明感があるのか?
さらに、沖縄の機(はた)を使って生み出される、立体的な花織の表情まで。
次回は「技」と「美」のお話です。
どうぞ、お楽しみに。
いつもありがとうございます。
