皆さま、おはようございます。着物923(くにさん)です。
風薫る五月も終盤。今日からはまたお天気に恵まれそうで、夏を予感させる力強さを感じます。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、実は最近、ホームページのリニューアルに没頭しておりました。
着物と生きるということ、そして商品のことや、Q&Aなど、これまで大切にしてきた想いを改めて言葉にしていく作業でした。 自分の歩みを一つひとつ振り返る、とても良い時間になりました。今はようやく一段落して、ホッとしています☺️
ところで、これは笑い話……いや、笑えない本当の話なのですが。
僕はずっと着物だけの生活を続けて34年目になります。
いろんな着物を着て、失敗も経験しながら、結局「本当に上質なもの」というのは、
名前や格ではなく「締め心地」や「着心地」に宿るものだと実感しています。
つい先日、高価で名の通った角帯を締めて店に立ちました。
実は、袴着用の時には締めていたのですが、普段には少し締めにくいと感じる帯だったので、
ある種のチャレンジでもあったのですが……。
ところが、これが正直ずるずると解けてくる。浪人結びにしても、貝の口にしても、
歩いているだけで解けそうになるんです。
店からデパートまでの5分の道のりでさえ不安で仕方がありませんでした。
片手には買い物袋、雨模様で傘も持っていたので、両手が塞がった状態で締め直すこともできない。
店に戻ったときはもうゆるゆるでしたが、なんとか解けずに帰れたことに、マジで安堵したほどです。
そんな僕の姿をそばで見ていたカミさんが、ポツリと言いました。
「ねえ……これ、あまりにひどい帯じゃない? 消費者センターに相談した方がいいんじゃない?」(笑)
めったに否定的なことを言わないカミさんがそう言うほど、僕の苦戦ぶりは滑稽だったのでしょう。

その翌日も、よせば良いのに同じ帯を締め、貝の口結びをしました。
やはり、ずるずると緩んできます。
そこで、カミさんの提案がありました。「ピンチをしたら?」ピンチでしたが、
装道のピンチが本当に役に立ちました。
写真用に上から羽織っている肩衣を脱いでの撮影ですが、その後は普通に過ごせました!
そしてそして、その翌日、僕はリベンジに挑みました。浪人結びを改良し、手先とタレ先を帯の中にいれる、
自称:「入れ込み結び」を試したのです。エッヘン!さすがにこれなら解けません。
おかげで一日は快適に過ごせましたが(笑)。
それにしても、締めるたびに緩んでくる「必殺、有名どころの角帯」!!
正直、ポリエステルの角帯の方がずっと締め心地がいいかもしれません。

そこで改めて、強く思いました。
「この帯の作り手さんや、流通に関わる方々は、実際にこれを締めて一日過ごしたことがあるのだろうか?」と。
もし、作り手や問屋さんがこれを締めたら、違った意味で驚愕されるのでは?と。。。
呉服の世界には、昔から微妙な構造があり、着る人と作る人が分断されていることも珍しくありません。
自らは着物を着ない、帯を締めない人が「売れる商品」を作ろうとすれば、
「着る人の心地よさ」は二の次三の次になっていきます。そんな矛盾は今回に限ったことではありません。
だからこそ、僕は自分の体で実験し、確信が持てたものだけをお客様におすすめしています。
僕が扱う品々は、決して「名前が有名だから」「高価だから」選んでいるのではありません。
僕自身が着て、動いて、失敗して、それでも「これは大丈夫だ」と心から思えるものです。
この角帯は、ある面、僕の着物人生の中の一例ですが、「高いお金を出して買ったのに、
これでは着られない」なんて思いは、もう誰にもしてほしくありません。
僕が経験してきた失敗も、苦い味も、すべてはお客様に「本当にいいもの」を届けるための礎となっているので、
ある面、この人体実験は武勇伝が刻まれていくのでありがたいことでもあります。
「10年後も20年後も、品質が保証されるものを。」これからも、作り手と着る人の架け橋として、
皆様が安心して着物と生きられるお手伝いをしていきたい。
ホームページのリニューアルで脳が活性化し、そんな想いを改めて強くしました。
朝から僕のつぶやきにお付き合いいただき、誠にありがとうございます。
今日も、佳き一日をお過ごしください。 拝