和の國ブログをご覧の皆さま、こんにちは。
「熊本ゆかりの染織作家展」実行委員の安達絵里子です。
今年から2カ月に1度のアップとなりました「熊本ゆかり便り」です。
皆さまに忘れられていないかとヒヤヒヤしながらのスタートです。
季節はすっかり新緑がまぶしい初夏の陽気となり、楽しくゴールデンウィークを過ごされていることと思います。
そんな季節にぴったりの、若葉に映える作品を「第5回熊本ゆかりの染織作家展」出品作からご紹介いたしましょう。
見ているだけで元気が出てきそうな、吉田美保子さん作「Charming Boxes」の帯です。
帯の背景になっているのは、同じく熊本ゆかりの染織作家である堀絹子さん作、手織り木綿のきものです。
帯ときものの爽やかな水色がリンクして、互いの持ち味を引き立て合っています。
このまま身にまとって街に繰り出したくなるのは私だけではないことでしょう。
さて、この帯は吉田さんの新作のひとつで、前回の「熊本ゆかりの染織作家展」でも特に人気の高い作品でした。
黄色に水色、若草色、青紫など、さっぱりとしていながら密度のある色の四角たちが弾むように並ぶ帯です。
ブラッシングカラー(摺り込み絣)によるその配色はアーティスティックで、作家ものならではの洗練された感覚がたまりません!
そして、もうひとつの魅力は織り味。
「ざっくり」でもなく、「つるり」でもない、なんとも慕わしい複雑な味わいを見せる地風です。
なんと13種類の糸を用いているそうです。
座繰り糸や玉糸、きびそ糸などそれぞれに味わいのある絹糸のほか、手撚りの和紙の糸も使っています。
そんな個性派俳優たちの糸を、わずかに藍などで染めるなどニュアンスのある表情をつけて織り上げているのですから、その織り味の豊かなことといったら……。
こればっかりは拙文を連ねるより、手に取ってご覧いただかなければ伝わらないかもしれません。
「進化する織のアーティスト」とお呼びしている吉田美保子さん。
昨年2014年は糸遣いに悩んだ一年だったとか。
耳(織り幅の両端)の織り味を楽しめる八寸帯のカジュアルさを生かしながら、いかにおしゃれな帯に仕上げるか――みずからに課した問題に対する、ひとつの答えが本作でした。
経糸に用いた和紙の糸がよく切れて、本当に苦心して織り上げたそうですが、その織り味たるや、格別の境地に達しています。
私はこの作品に出会えたことに感謝したい思いすら抱きました。
吉田さんが織り味に追及するようになったのは、ご自身もきものを着るようになったのも一因とおっしゃいます。
吉田さんのステキな着こなしは2014年熊本ゆかり便り9月号でもご紹介しておりますので、ぜひご覧くださいませ。
改めて吉田さんの作品を眺めていると、「きものを着ること」の本質に思いが至ります。
着るだけなら洋服でも、化学繊維でもかまわないはず。
でもなぜ「きもの」を着るのか、なぜ吉田さんの作品を身に着けたいと思うのか。
やっぱり「着ること」は「より良く生きること」なんだなあと。
思いのこもったものを身に着けると、美しくなれるだけでなく、パワーも与えてもらえます。
吉田さんの作品には、この「パワー全開」に満ちあふれているような気がします。
こんな作品をたゆまず創作し続ける吉田さんを応援したいと思います。
本作を始めとした吉田さん作品は、ぜひ和の國にお問い合わせください。
本格的な「誂え」である「ONLY ONLY」で自分たけの一枚を吉田さんと二人三脚で作り上げることもできます。
今回も最後までお付き合いくださりありがとうございました。
次回は7月3日頃にレポートいたします。
「熊本ゆかりの染織作家展」実行委員 安達絵里子
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