和の國ブログをご覧の皆さま、こんにちは。
「熊本ゆかりの染織作家展」実行委員の安達絵里子です。
いよいよ師走に入り、寒さも本格化してきました。
「第5回熊本ゆかりの染織作家展」もあとひと月を迫り、このたびご案内のハガキができましたのでお知らせいたします。
ここ2年ほどは和の國にしつらえたお正月飾りとともにご案内ハガキを作成しましたが、今回は作家の皆さまの作品を並べてみました。
心ときめく彩りの染め模様あり、ほっこりとした織物あり、なんと華やかなことでしょう!
ハガキでは詳しくご説明できる紙幅がありませんでしたので、この欄にてご紹介いたしましょう。
上の段、左側から
●堀 絹子さんの木綿織物です。
絹織物に限らず、木綿や毛織物、和紙に至るまであらゆる素材を用いた織りを極めて45周年を迎える堀絹子さんの織物は、ひと味違います。
こちらの木綿織物は青磁色に紅梅や鬱金色、白の縞を通した清やかな色目が印象的です。それが微妙に格子に見えますのは、緯(よこ)糸の太さを替えたり、組織織りを取り入れたりすることで、布目を変化づけているからです。
そのため織物の表情を愛でながら着ることができるのです。
これをぜひ手に取ってご覧になり、織り味の妙をお確かめくださいませ。
堀絹子さんは初日1月3日(土)11時30分からギャラリートークをしてくださいます。
熊本の宝、堀絹子さんのお話をお聞きできる千載一遇のチャンス!です。
自作をお召しのおきもの姿もステキな方なので、ぜひお近づきになりましょう。
私も自慢の堀絹子作品を着てうかがう予定です。
●吉田美保子さんは、わざわざ神奈川県は大和市から飛行機に乗って駆けつけてくださいます。
ハガキに掲載した作品は「新境地」の八寸帯で、当日までにお嫁入りしていなければ会場でご覧いただけます。
素材の糸選びにこだわった作品で、「きびそ糸」(蚕が繭を作るときに吐き出す最初の糸。素朴な風合いが魅力)を経糸に用いているそうです。
風趣のある糸ながら織るのには大変扱いにくいとのことですが、一越ひとこし丹念に織り上げた味のある織物となりました。
一見シンプルなのに、吉田美保子カラーともいえる洗練された色遣いはさすが。
「織のアーティスト」と言われるゆえんですが、古今東西のアート界の動きに敏感で、常に勉強を怠らない吉田美保子さんだからこそ生み出された色彩感覚です。
おしゃれでありながら締めやすさも抜群でしょう。
吉田美保子さんのギャラリートークは1月4日(日)11時30分から。
毎回趣向を凝らしたお話は興味深く、思わず「もっと話して!」とアンコールしたくなるほど。
ずらりと並ぶ吉田美保子さんの新作を前にすれば、新しい年の新しいきもの姿が見つかるはずです!!!
●岡村美和さんは、型染の帯を掲載しています。
帯合わせしやすい生成り地で、型染ならではのリズム感が魅力です。
岡村美和さんの作品の魅力はひとくちでいえば「ヌーベル・クラシック」。
古典的といえる意匠を取材しながら、その色遣いは現代の美意識が加味されて、岡村美和さんでしか表せない作品となっているところです。
芹沢銈介さんらによる民藝を土台に、自らの花を咲かせた創作で、帯作品だけでなく和紙にもその美が生かされています。
近年よく聞かれるようになった言葉に「女子力」がありますが、岡村美和さんの帯は「女子力」が高いと申しましょうか、媚びのない可愛らしさがあります。
そのため締めていて楽しいのはもちろん、周りの方にも「受け」がよく、帯を話題に楽しいおしゃべりのひとときを過ごせる魔法の帯でもあります。
岡村美和さんのギャラリートークは1月5日(月)11時30分から。
この「熊本ゆかりの染織作家展」をきっかけ?に、きものをお召しになる機会が増えたとおっしゃる岡村美和さん。
自作の帯を締められた岡村美和さんはもちろんステキですが、ご自身の作品をお洋服に仕立てられたその着こなしもステキな方です。
●溝口あけみさんは、日本工芸会正会員として全国区で名の知れたお方。
写真の作品は9寸染めなごや帯「山吹の花文」のお太鼓部分です。
型絵染ならではのキリリとした染め際の美しさと、ぼかしによる奥行きのある色彩美に定評があります。
どこか詩心を感じさせる作品は優しい雰囲気に満ちているのですが、仕事内容をお聞きすると、惜しみなく手間ひまをかけていることに驚きます。
苦労を表に出さずにあくまで美しい表情を見せる作品世界……溝口さんの作品には後光が差すような品格があります。
そんな作品に身を包まれると、着る人まで不思議とその恩恵を享受することができます。
これは本当です。
実際に私自身が体験したのですから、自信をもって言えます。
なんだか自分が「いい人」に見えるのです!
「着るものが自分を引き立ててくれる」というのか、「ランクアップしてくれる」というのか。
私にはまだよく分かりませんが、勇気百倍のパワーを授けてくれるような気がするのです。
「着物」は「気物」で「気」を身にまとうものだと、どこかで聞いたことがありますが、なるほどと、うなずける溝口あけみさんの作品です。
●黒木千穂子さんは、秘境とも言われる自然の宝庫・五家荘に住んで染織に打ち込まれている方です。
写真は9寸帯のお太鼓部分です。
めがね織りという組織織りは、おしゃれな感覚が魅力なだけではなくて、締めやすさもバツグン。
何度も糸染めを重ねて得られたこっくりとした色は、セイヨウ茜、インド藍、タマネギの皮、セイダカアワダチソウなどの生命力に満ちています。
かつて黒木千穂子さんは故立松和平さんの取材を受け、そのようすは『染めと織りと祈り』という1冊の本に収録されていますが、黒木さんの作品を拝見していると、思わず祈りを捧げたくなるような敬虔な気持ちになります。
自然に生きる植物から色をいただいていること、努力を重ねて精進し寡黙に作品を織り上げる黒木千穂子さんの創作姿勢……
100円ショップで何でも手に入る時代だからこそ、すべてが尊く感じられるのです。
私事ながら、私は毎年「熊本ゆかりの染織作家展」で1点ずつ作品をお頒けいただいております。
今回は「黒木千穂子さんの年」です。ウフフ
どの作品をいただいたらよいか、会場にお越しの方はどうぞ安達にアドバイスをお願いいたします。
そして、どなたか、私と黒木千穂子さん作品で「お揃い」にしませんか?
●島崎澄子さんは、昨年ご親族の介護でお忙しくてお休みなさいましたが、また今回ご出品くださいます。
東京友禅の巨匠・塩沢照彦、啓成氏に師事し、東京友禅ならではの洗練を受け継ぎ、さらに島崎澄子さんのみずみずしい感性が生かされた作風が特徴です。
写真は訪問着の一部分で、「ボリジ」というハーブをデザイン化した模様が描かれています。
自然の花をそのまま描写するのではなく、何度もデッサンを繰り返して納得のデザインを求めていく過程を経て生み出された作品は、衣桁にかければ一幅の絵を見るように美しく、身にまとえば花の精のようにエレガントな着姿を支えます。
「熊本ゆかりの染織作家展」では開催を記念して、2年前から会期中にオリジナル帯揚げを発表しています。
今回は島崎澄子さんがお引き受けくださいました。
私はまだ拝見しておりませんが、ステキに染め上ったようすで、楽しみにしています。
染織をされる方は色彩のプロでもあり、染織作家が吟味して染め上げた帯揚げにはいっそうの魅力が感じられます。
もちろん生地は「和の國オリジナル」ですので、サイズ・ちりめんの質感ともに「和の國」好み。
それが9,800円(税込)。
島﨑澄子さんも和の國もがんばって、この価格を実現しました。
限定品ですので早めにお求めくださいますようご案内申し上げます。
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なお、案内ハガキに掲載させていただきました作品は、会期までに売れるなど諸事情により出品されない場合がございます。
ご遠慮なくお問い合わせくださいませ。
また、掲載作品のほかにも多数出品されますので、どうぞ会場でご覧くださいますようお願いいたします。
それでは、1月3日~5日、お待ちしています!!!
毎日ギャラリートークがあり、展示替えもいたしますので、どうぞ毎日でもお越しくださいませ。
今回も長きにわたりましたが、どうもありがとうございました。
「熊本ゆかりの染織作家展」実行委員 安達絵里子