一日の仕事を終え帰宅し、ひと風呂浴び、作務衣に着替え、日付けが変わる前に急ぎ高速道路に乗り、一路鳥取方面に車を走らす。鳥取民芸館、浦富焼などに立ち寄るが、浦富焼の山下硯夫さんが昨年亡くなられたとのこと。私の知り得る限り、白磁を登り窯で焼いていたのは、山下さんと砥部焼の池本さん位だが、池本さんも亡くなられたのは今年の夏。良い手仕事がどんどん減っていく。日本海の青い海、白い雲に向かって、「花入れ・そば猪口・お湯のみ・お皿など大切に使わせてもらいます!」とそっと手を合わせた。 応挙寺とも言える「大乗寺」(兵庫県香美町香住区)に着いた。熊本から約800㎞の道のりだ。心躍らせながら、楼門を潜る。4年程前に一度尋ねたことがあるが、何度でも足を運びたい日本有数のお寺だ。久々の対面。衿を正す為に、履物を変え足袋をはき、紗の袖なし羽織を着た。しかしながら、保護の為に応挙の襖絵がレプリカに変わっていた。ロケーションは最高だが、訴えてくるものがない。襖を絵として保存し、東京なので展覧会があるのもよいが、「紫外線が強くない初春・晩秋など一定期間、このお寺のここの場所でしか見ることが出来ない」ようにすれば、応挙の心意気いや、息づかいまで感じる事ができるのに。門外不出、この寺だからこそ…。