平成25年師走、凛とした空気が漂う中、高速カーフェリー・オーシャンアローに乗り有明海を船で渡った。雲仙・普賢岳が近づいてくる。
目指すは、九千部岳。熊本から見ると普賢岳の裏手にある標高1062mの山。道路に2~3cm雪が積もる中、スタッドレスタイヤの四駆が活躍する。登山口に着いた。
山登りのリーダーは、熊本市副市長・牧慎太郎氏、全国600以上もの名山を闊歩した山の達人でもある。だからこそ、初心者の僕も冬山登山に挑める。雪山に備えて購入した登山靴、オレンジの紐を固く結んだ。
未明の積雪だろうか、純白の登山道だ。ギュギュッという音を楽しみながら、一歩一歩を重ねた。東斜面では太陽が降り注ぎ、キラキラと輝く銀世界。ウサギの足跡に歓喜し、笹にふんわり積もった雪をほおばる。
ゴツゴツした岩山を登り、頂上についた。360度、大パノラマだ。普賢岳を右手に有明海の向こうに熊本市内が広がる。目を移すと諫早湾干拓の水門も見える。天を仰げば白い樹氷と青い空の眩しいコントラスト。圧巻だ。これぞ冬山の醍醐味か。
洋服を捨て20年だから、山登りの服装は和服。愛用の徳島県「本藍染作務衣」だ。木綿の素材は風を通すが、頂上は無風なので心地良い。父から借りた防寒用ジャンバーの出番はなかった。
僕なりのこだわり、作務衣に登山靴、頭には和手拭いの「和の登山スタイル」が完成。山登りという新たな自然礼賛の趣味が広がった。
初夏には、九重連山の「ミヤマキリシマ美麗登山」を計画中。どの山から眺めようか、ワクワクする。