今日は「月に一度は着物を着ましょう!」というNPO法人きもの普及協会の主旨に則り、「きものde美術鑑賞」を開催した。TVや新聞を見なくなっていく久しいが、このときばかりはお天気が気になる。有難すぎることに、開催時間に向けて雨脚も強くなる。キャンセルの電話も鳴り響く。参加者12名、もちろん全て着物姿。私は玉虫紬に夏の御召袴に漆黒の紗羽織姿で参加した。他のお客様の視線を浴びながら、熊本県立美術館にて「アンコールワット展」を鑑賞だ。学芸員の有木芳隆氏の話も素晴らしい。コンコンと沸き出る泉のように、言葉がどんどん溢れてくる。たくさんシャワーを浴びた中で印象に残った言葉がある。「作られた石碑のほとんどは、誰が作ったか作者名の刻印もされていない。しかしながらその卓越した技術はしっかりと受け継がれている」ということだ。誰が作ったかも分からないものに対し、誰もが拝み心の拠り所とする。ふと、江戸時代を作ったのは徳川家康だが、日々自分に与えられたことを無心にこなしている民衆の力なくして、その時代はあり得ない。当協会も、お一人お一人の力が集まってこそ、会として成り立っていく・・・。そういったことを考えながら石像をみていると、余計に輝いて見えた。まさに、無名潔し、日々精進だ。 お昼三々五々となったが、駐車場に向かうまでに袴もびしょ濡れだ。絞れば水が滴るぐらい。私の着物など基本的にはパールトーン加工をしていないが、こんなときは雨を弾いてくれそうだ。もちろん、足袋も右近下駄も履き替えた。気分新たにお店に入ると、またお客様との様々なドラマが待っていた。