横浜を中心に全国に能楽の活動を続ける…「白謡会」の支部が熊本に出来て3年目となる。今回は、その会の主宰の平戸仁英先生が、観世能楽堂で本能「安達原」をのシテ役を演じられる。日常業務に追われている中、スタッフ不足や景気停滞もあり、正直東京へ飛ぶのを悩んだ。しかし、師匠はボランティア同然で熊本にお越し頂いている。「道」を選んだ。 昨晩遅く実家(菊池)に帰ったので、実家からの出発となる。崩しのウールを着ていく予定。合わせやすい羽織を事務所に置いてきたので、別珍の袖なし羽織を着て、その上に「大島のトンビ」を羽織り海を渡った。その演目はお昼12時頃の予定だが、ぎりぎり間に合った。私がコメントできる立場ではないが、「糸之段」にも緊張が走り生唾を飲み込む。後シテの鬼人も、乗り移ったかのよう。その姿が我が師匠だ。本能をやり遂げる。見る方の何百倍の集中力が、我々を幽玄の世界へと誘ってくれる。 その「颯々会」は午前9時始、午後7時終演よていだ。後ろ髪を引かれながら、三井記念美術館へと向かった。「丸山応挙展~空間の創造~」を見るためだ。今回初めて「国宝 雪松図屏風」と出会った。普通、興味がある時は、イヤホンガイドを数回聞くのだか、この絵を見るときはその必要もない。圧巻だ。特に全体を描き奥へ奥へと広がりをもたらす構図、和紙の白の表現には驚いた。応挙の作品は度々眼にすることがあるが、改めて気づいた事が二つあった。その一つは、「余白」。日本画で好きな人を一人と言われたら、間違いなく私は応挙を上げている。繊細な表現はもちろん、その最大の理由が「余白の美」にあった。また、もう一つは、「奥行き」。絵にも奥行きがある。「雪松図屏風」を20~30分角度を変え見ていているうちに、奥行きという言葉が頭をよぎった。私の人間性も「奥行きのある人」になることが、どれだけ大事なことかというのをこの絵を見つつ、先程の能と重なっていった。 また、ブリジストン美術館では「セーヌ川の流れに沿って」というテーマで絵画展が開かれていた。歩いて10分ほどの距離だ。チョッと悩んだが、欲張り精神旺盛。テーマにそそられ見ることにした。しかし今回は、雪松図屏風でお腹いっぱいになっていた。よって集中が出来ないままだったが、モネの「セーヌの朝」に心癒されていった。やはり、西洋美術も素晴らしい。 夜は、渋谷で白謡会のメンバーと懇親会。千鳥足で西麻布の宿へと向かった。