朝から天上まである「着物ダンス」の中から、足継ぎをして伊平織の着物(黒つるばみ色)を取り出した。元々は深緑色で家内の着用品だったが、とある理由により「目引き」をして私が着るようになった。羽織は漆黒の別珍の袖なし羽織を着て、菊地女子高校へと向かった。ご縁で、普通科・家政科の2年生に3~4時間目の特別講義をさせてもらうからだ。 そこで私的に一番伝えたかったことは、日本の良さ・着物の素晴らしさうんぬんよりも、「休んでもいいから、続けることの大切さ」だ。なぜかというと、「きもの宣言」という唯一無二の世界に飛び込んで、ただそれをひたすら続けたから今があるから。続けたことによって、日本が好きになり、着物が好きになったから。ゆえに、今の若い世代の方に、「続けると、人生は楽しくなること」をお伝えしたいからだ。「もし」という事実は存在しないが、もし洋服を着ながら仕事をしていたら、使命感より自分の売上。着物だけではなく、宝石・毛皮・健康食品・損保と、自分で責任が取れない仕事にも関わっていたかもしれない…もう一人の怖い自分が見え隠れする。特に今の時代背景ならなおさらだ。ましてや、もしこういったご縁も頂いても、話す内容も全く違っただろうし、自分の体験から出た「言霊」となってはなかっただろう。 「きもの宣言」の宣言文も読み上げ、たくさんの質問もでた。「夜寝る時も、着物ですか…?」「着物を着ていて、大変じゃないですか…?」「仕事で楽しいことや、イヤなことは…?」「経営って、大変じゃないですか…?」 そういったことに加え、「今の女子高校生に望む事は?」ということも、お話して良いということを事前にお聞きしていた。よって、のっけから、姿勢やお辞儀の仕方はもちろん、外見より中身を磨くこと、そのためには、「おはようございます」「いただきます」などの言葉の持つ意味を含めて、いかに普段に挨拶や美しい言葉を大切かということや、黒髪のことなど、ほどばしるようにお話させて頂いた。そして、「感受性」の必要性、自分の意見をもって、昨日の自分より少しでも成長すれば大丈夫だこと。あきらめなければ必ず実ること。明るい挨拶でも何でも良いから「続けること」の大切さを力説させて頂いた。改めて、うなずいてくれる方、目を見て話を聞いてくれる方、オチで笑ってくれる方の有り難さを感じた。全力疾走の2時間。シャイでうつむき加減だった乙女さんたちの眼が、キラキラと輝きだしていることが一番の収穫だった。改めて、このご縁を頂いた徳永良子先生、赤星先生のおかげで貴重な体験をさせて頂いた。本当に有り難い。 市内に向かう道中で昼食を済まし、事務所で「生姜天日干し」などを作り午後3時頃お店に入る。日常業務に加え、新設された「熊本欧州倶楽部」の事務局としての仕事も待っている。銀行さんからも電話。NPOの書類提出のメールも届いている。明後日からは展示会、仕事が山積み。気合だ。ふと、昨日届いたSOMEORI・吉田美保子氏の名古屋帯をもう一度見てみたくなった。昨晩電話で、帯の作成イメージを聞いていた通り、そこには、青いリンゴ・赤いリンゴがシルクに包まれ、優しく微笑んでくれていた。