和の國ブログをご覧の皆さま、こんにちは。
「熊本ゆかりの染織作家展」実行委員の安達絵里子です。
弥生3月。桃の節句を迎え、春のおしゃれを楽しめる頃になりました。

さて「熊本ゆかりの染織作家」の皆さまは、相変わらずご活躍中です。
雑誌に掲載された方を発行順にご紹介しますと、まずは吉田美保子さん。
2月1日発行の『和楽』3月号に「スモール・バード」というタイトルのついた帯が掲載されました。
玉糸やタッサーシルク(インドの野蚕)、カンボウジュ(東南アジアのカンボジア周辺にいる野蚕に近い家蚕)を使った締めやすくもおしゃれな八寸帯で、「熊本ゆかりの染織作家展」にも出品された「シトラス・シリーズ」の一連の作品です。

次に、2月20日に発行されたばかりの『美しいキモノ』春号に掲載されたのは、溝口あけみさんの型絵染のきものです。

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この号では型染が特集になっており、現代の日本を代表する型絵染作家の作品が紹介されている中に、溝口さんのきものを見ることができます。
私なぞはページをめくって溝口さんの型絵染のきものを発見したとき「この方こそ熊本が誇る自慢の方なのですよ!」と声を大にして叫びたい思いがしました。
このように全国レベルで活躍されているお姿を拝見するのもうれしいものです。

さあ、恒例の「第4回熊本ゆかりの染織作家展」に出品された作品をご紹介するコーナーに移りましょう。
今月ご紹介いたしますのは、その溝口あけみさんの染め帯です。

溝口あけみ作・9寸染め帯「山吹の花文」

写真はお太鼓部分で、紗綾形地紋の紋意匠縮緬地を穏やかな赤香色に染め、山吹の花枝を型絵染で表現しています。
一見して「大島や小紋などのしゃれたきものを始めとして、結城紬や上質な草木染紬まで、なんにでも合いそうな上品な帯!」ですが、よくご覧くださいませ。

地色に不定型な形で窓のような白場を表したところに彩色された山吹を、そして地色部分には白抜きで山吹を表現しているのですが、この花枝は一本でつながっています。
こんなデザインの面白みは江戸時代の小袖にも見ることができますが、陰陽の妙を感じさせるこの意匠は、古典の系譜をたどりつつ独自の美を開拓しているといってよいでしょう。

また、染め色の美しさも見どころのひとつです。
型ならではのシャープな線と、その内側にあるぼかし染めの濃淡。染色の味を一本の帯で堪能できるのはうれしい限りです。

着用時期としては、山吹の開花時期である4月を中心とした春が最適でしょう。
でも型絵染はかなりデザイン化して表現されているので、季節に縛られることなく、着る人の気持ちに応じての着用をお勧めしたいと思います。

山吹は古典文様としてはあまり見られませんが、植物としては万葉の時代から愛されています。
『万葉集』にある高市皇子の歌「山吹の立ちよそひたる山清水 汲みに行かめど道の知らなく」をご存知の方が多いことと思います。
文学の世界に心遊ばせながら、おしゃれを考えるのも、きものならではの楽しみです。

今月もどうもありがとうございました。
また来月お便りいたします。